続く緊急事態宣言・出口見えぬ旅館業「銀行借り入れ」の日々続く
「今月初めからまた休業、せっかく客足が戻ってきていたのに」修学旅行生をメインに受け入れていた京都市北区の旅館「然林房」、若女将の馬淵能理子さんは静まり返った館内を見てため息をついた。
新型コロナウイルスの感染が拡大しはじめた昨年2月下旬、春先から夏にかけての修学旅行や大学などの研修旅行がすべて取り消されたり、延期された。4月に出された一度目の緊急事態宣言後は休業し、5月の緊急事態宣言解除後も予約が入らず、6月末まで閉館していた。
旅館はプールを併設し、悩みぬいた末に営業を決めた。すると、近郊の公営プールが休業していたことが追い風となり、客足が例年の数倍に増え、感染予防のため、入場を断る日もあった。政府の対策GoToトラベルも開始され、秋には念願の修学旅行生が戻ってきた。
久しぶりに館内に響くはしゃぎ声、いつもはこんなに賑やかだったと嬉しくて涙が出そうだった。稼働率が7割まで戻り、年末年始の予約も満室になっていた12月中旬、GoToトラベルの停止が発表され、すべて白紙に、1月~2月の修学旅行も再びキャンセルとなった。今月の緊急事態宣言再発令を受け、新年度にまでキャンセルが出始めた。
銀行からの借り入れで何とか凌ぐが出口が見えない。それでも希望をつなごうと、庭園を照らす竹の明かりを自作するなどして客を迎える準備を進める。馬淵さんは「旅館は日本の文化を伝える大切な場所、ホテルが急増する中、潰れる訳にはいかない」と力を込める。
地域住民の利用に光を見いだそうとする旅館も
昨年の春以降、インバウンド(訪日外国人)や市外からの観光客の激減に伴い、地元の住民の利用に出口を見いだそうとする旅館もあった。嵯峨嵐山地域で1897年(明治30年)に創業した老舗旅館「渡月亭」(西京区)は昨年7月の営業再開後、地元市民向けに素泊まりの宿泊プランを創設、感染拡大防止と旅館支援を両立するため、市が「京都市民による京都観光」のキャンペーンを始めたことがきっかけだった。
食事は近隣の料亭やカフェを紹介し、近隣店舗の支援につなげたいと願ったが、結果、京都市民の利用は一件もなかった。売り上げの4割を占めていた京料理の宴席も大きな影響を受けた。忘年会や新年会シーズンは前年に約50組が利用したが、今回は大人数での会食自粛が呼びかけられたため、利用数は数組のみ、100人規模で利用できる135畳の会場はこの1年間一度も使われなかった。
渡月亭の取引先は食材業者など約50社に上る、4代目社長、古川拓也さん(45歳)は、旅館だけが打撃を受けているのではない、取引業者の売り上げ減を穴埋めしてもらえるような手立ても必要だと支援拡充を訴えた。